身近にある日本
毎日の生活に生きている日本の伝統

琴とはどんなもの?

お正月になると決まって流れるお琴の音色。あれは写真の「筝」で奏でている音色です。
焼き菓子の八つ橋(生八つ橋ではないほう)は、この筝がモチーフですね。琴の名手で作曲もしていた八橋検校(やつはし けんぎょう)を偲んで作られたものです。


実は「こと」と言われる楽器はいくつかあります。
一弦琴(須磨琴)、二弦琴(八雲琴)、七弦琴(古琴)、大正琴などで、本当はこれらの「琴」と「筝」は違う楽器なのです。
「筝」は「そう」と読み、13本の弦を「柱(じ)」という支柱を立てて音を調整するのですが、「琴」は支柱はありません。
ただ、現在では「こと」といえば「筝」を指し、「筝」を「こと」として認識している、という本当は複雑なことになっています。
現在の「こと」は写真の「筝」ですね。長さ183cm、幅30cmほどなので、大きいです。

筝は、13本の弦に「柱(じ)」を立てて、浮いた弦を「爪(つめ)」と呼ばれるもので弾くように弾く、弦楽器です。
写真は私の筝なのですが、私は山田流という流派のため、爪が三角です。
日本では大きく流派が2つあり、生田流筝曲と山田流筝曲に分かれます。
生田流の爪は四角で、山田流の爪が三角となっています。
テレビなどでは生田流の方が出ていることが多いため、三角の爪は一般的に見ることは少ないかもしれません。

筝の13本の弦は、壱、弐、参、四、五・・十、斗(と)、為(い)、巾(きん)、と数えます。
楽譜も漢字で書いてあり、しかも古いものはこのように縦書きです。
筝は奈良時代に、雅楽とともに中国から伝わったとされているので、漢字縦書きは当然だったのでしょうか。
この写真は、私が40年ほど前に使ったものなので、今は縦書きはあまりないと思いますが…

※2022年に放映されていた「鬼滅の刃~遊郭編~」での音柱、宇随天元が戦いの際に完成した楽譜を叫んでましたが、「斗為巾!」に聞こえました~!漫画では描いておらず、アニメだけだったように思いました。

さて、音を出す爪の三角の部分は、昔は象牙でした。
ただ現在はプラスチックやカバの牙などもありますね。象牙は規制されるがカバならいいのか、プラスチックはどうなのか、など考えていくと、選択が難しいです。

爪は輪の部分は、羊や猫、鹿など、が使われますが、発表会用のものは和紙を皮の外に巻いてあるものを準備していました。
写真は和紙で外側を包んだものになりますが、何度も使っているので黒ずんでます…
親指、人差し指、中指に嵌めるのですが、指輪と同じように指の太さにしっかり大きさを合わせないといけません。
案外外れやすいので、発表会の時などには卵の白身を指につけてから爪を嵌めて、卵白の凝固作用を利用して外れないようにしていました。

音階は、「調子(ちょうし)」と呼ばれ、基本が「平調子(ひらぢょうし)」というものです。そう言われても何が何だかわからないとは思うのですが、ほかに雲井調子、本雲井調子、半雲井調子などがあります。
曲によってどの調子で弾くかが決まっていて、その曲ごとに「柱(じ)」の置き場で調子を変えます。

基本的に爪で弾くのですが、少し音を高くしたい、などの場合は弦を押して音を高くします。
ギターも押さえる場所を変えて音を変えますが、同じような原理ですね。
柱のすぐ左を押すと音が高くなるのですが、きっちり下まで押す場合、半分だけ押す場合などがありますが、大勢で弾く場合は全員で音を合わせなければならないので半押しなどは大変です。
しかも押している間に深さが変わると、音も変わるために、絶対動かせません。筝の糸は太く、押すといっても力も必要ですし、慣れないととにかく指が痛いです。筝をよく弾いている人の左の中指は糸を押す形でマメになっていますが、そこまでになっていないと平気で押し続けることができません。

また、筝はとにかく大きいので、簡単に持ち運びができません。
もちろん、部屋の中でいつでも弾ける状態にして置きっぱなしにするのも大きすぎて邪魔になってしまうため、通常は立てて置いておきます。
あまりお手軽感がない楽器だなと、やっていても思います。
といっても、そもそも平安時代の雅な方々が弾かれていた楽器で、家の造りや時の流れの速さが違う時代に楽しまれていたもの。今の時代に合わないのかなと思います。
それでも筝を弾くと、やはり時代を戻したような感覚になります。日本古来からの伝統ある楽器なので、未来に残っているとうれしいですね。